中国車、ロシア市場席巻の裏側:モスクワの複雑な対中感情と関税政策

中国車がロシア市場を席巻?モスクワの複雑な胸中とは

中国の自動車メーカーが、ロシア市場で驚異的な販売台数を記録している。しかし、その状況を、モスクワは手放しで喜んでいるわけではないようだ。この記事では、中国車のロシア市場進出の現状と、それに伴うモスクワの複雑な感情について掘り下げていく。

中国車のロシア市場での躍進

2025年、中国の自動車メーカー、特にChery(奇瑞汽車)、Geely(吉利汽車)、Great Wall Motor(長城汽車)は、ロシアで100万台以上の自動車を販売した。これは前年の約7倍という驚異的な数字だ。ロシアは中国にとって最大の輸出市場となり、そのシェアは約30%を占める。

モスクワの懸念と対策

中国車の急増は、ロシア国内の自動車メーカーの競争力を脅かすとの懸念を引き起こしている。そのため、モスクワは中国からの自動車に対する輸入関税を引き上げざるを得なくなった。関税は数週間前に約7,500ドルに引き上げられ、2024年10月の約5,790ドルから大幅な増加となった。さらに、今後も毎年引き上げられる予定だ。

Rhodium Groupが発表したレポートによれば、ロシアが関税を引き上げた背景には、「中国の緊密な地政学的同盟国でさえ、中国の過剰生産能力の投げ売り場となることを嫌っている」という事情がある。

中国車の内訳とロシア国内メーカーへの影響

中国車の大半は内燃機関エンジン車であり、ロシアにおける電気自動車(EV)の需要の低さを反映している。ロシアの自動車市場の約3分の2を、中国ブランドが占める状況だ。

ロシア国営自動車メーカーAvtoVAZのCEOであるMaxim Sokolov氏は、「中国車の流入は、国内の自動車および部品産業の持続可能な存続に対する現実的な脅威となっている」と述べている。

中国の自動車輸出の全体像

中国は昨年、前年比23%増の641万台の自動車を輸出した。ロシア、メキシコ、アラブ首長国連邦が、主な輸出先となっている。

中国製の、より手頃な価格でハイテクな高級車、特にEVは、ブラジル、メキシコ、東南アジアなどの市場でドイツや日本の自動車メーカーに取って代わりつつある。

貿易障壁と中国メーカーの戦略

EUは中国製EVに対し、包括的な関税を課すことを決定した。一方、米国も貿易制限を導入している。これに対し、BYD、Geely、SAICなどの中国EVメーカーは、関税を回避し、需要の拡大に対応するため、戦略的な投資や現地生産施設を通じて海外展開を加速させている。

まとめ

中国車のロシア市場への進出は、両国間の経済関係の複雑さを示している。中国の自動車産業にとっては大きなチャンスである一方、ロシア国内の自動車産業保護の必要性から、モスクワは苦渋の決断を迫られている。今回の関税引き上げは、そのバランスを取ろうとする試みと言えるだろう。

中国メーカーは、EV市場での競争力強化と貿易障壁の回避策を講じながら、世界市場での存在感を高めていくことが予想される。今後のロシアと中国の自動車貿易がどのように展開していくのか、注視していく必要があるだろう。

キーワード: 中国、ロシア、自動車輸出、関税、自動車産業

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